観光産業のビジネスチャンスとコロナの影響
一般的な買い物への購買意欲が、レジャー(行楽)経済にシフトチェンジしたことにより、観光産業の分野でのビジネスチャンスが開けたと言え、その影響力は、魅力溢れる観光地を持つインドネシアの観光産業に大きな影響を与えています。
2017年には、1,400万人が海外からインドネシアに観光で訪れており、これらの観光客は1日当たり、1,000米ドルを消費し、その人数も前年より200万人が増加し、2015年と比べると、386万人が増加しました。
2015年に、観光産業はインドネシアの経済に十分大きな貢献を果たし、122億2,200万米ドルの外貨を獲得しました。この金額は、インドネシア国内総生産の額の10%に匹敵します。当然政府は、この観光産業のビジネスに注目し、より多くの外貨獲得のために、観光分野が優先されるようになり、大統領も何度も、観光産業は国民の経済をリードしていく分野だと述べました。
インドネシアの観光産業の発展をながめてみると、政府は2019年には、240億米ドルの外貨を獲得するという産業戦略を掲げ、この数字は天然ガス、石炭、ヤシ油といった分野よりも多くの外貨となり、年間2,000万人の海外からの観光客に相当するものでした。
インドネシアでの観光産業のビジネスのチャンスも先行きは明るくみえ、国内外からの観光客に人気を集めるための様々な新たな観光地が開発されました。
現在政府は、より多くの観光客をインドネシアに招致するために、『10の新しいバリ島』と呼ばれる計画を進めています。
10の新しい観光地が開発されているこの計画の中には、トバ湖、タンジュン・ルスン、タンジュン・クラヤン、千の島々、ボロブドゥール、ブロモ山、マンダリカ、ラブアン・バジョ、ワカトビとモロタイが選ばれています。
新型コロナのパンデミックは、インドネシアの観光産業と創造経済を破壊しました。それは実際に、2020年の2月以来インドネシアを訪れる外国からの観光客は激減し、同年4月には15万8,000人にまで落ち込みました。
2020年、1年間の間にインドネシアを訪れた外国からの観光客の数は、およそ405万2,000人しかいませんでしたので、この人数は、2019年、1年間の間にインドネシアを訪れた外国からの観光客の数の25%程度しかないことからみても、いかに少ないかがわかるでしょう。
観光客の数が減ってしまうと当然、観光産業の国の収入もその影響を受けてしまいます。大規模な社会制限とインドネシアへの出入国の禁止などによって減少した、観光産業における国の収入は200億7,000万インドネシアルピアにおよびます。
さらには外国からの観光客が減った事で、インドネシアの各ホテルは非常に大きなダメージを受けました。
1月から2月までの間、49.17%から49.22%の割合でお部屋がうまっていたものが、3月になると32.24%に下がり、4月になると最悪の12.67%まで落ち込みました。
新型コロナパンデミックがインドネシアの観光産業に与えた影響は、労働時間の減少からもみてとれます。観光産業に従事している人々のうち、およそ1,291万人の労働時間が減ったとみられ、93万9,000人が労働時間がなくなったとみられています。
見方を変えると新型コロナのパンデミックは、観光産業の様々な職業に直接影響を与え、40万9,000人が職を失ったとみられています。
インドネシアの観光産業を救う手段
インドネシアの観光産業を救うために、できるだけの適切な措置を行わなければならず、観光と創造経済省が中心となって、それを3つの段階に分けて行っていかなければなりません。
それが、緊急支援、復興、平常化の3つです。
まず最初の緊急支援の時は、保健面に集中しなくてはいけません。リモートで仕事をする際の社会保護、創造と生産の後押し、観光危機に対し、観光地域と協力をして復興に向け準備を行います。
復興の段階では、インドネシアの観光地を段階的に再開していきますが、そのための事前準備は充分に整えなければならず、CHSE清潔、健康的、安全、持続的環境を徹底し、インドネシアでのMICE活動(ミーティング、インセンティブ、コンベンション、エキシビションなど)を適用させなければなりません。
そして最後に、平常化の段階があり、CHSE(衛生、健康、安全、環境保護)を整えた観光地を市場で売り出し始め、パッケージ旅行やMICE(ミーティング、インセンティブ、コンベンション、エキシビション)のためにディスカウントを行ったりします。その一環として、2020年8月から9月にかけて、バーチャル旅行フェアーが行われました。
コロナ禍で変化する趣向
観光と創造経済に携わる人々にとって、コロナ禍を乗り切るためのキーポイントは、優れた適応力、進歩力や融合させる能力を持つことです。
市場も含めて、社会全体が大きく変化してきており、旅行に対する人々の趣向も変化してきています。
一番シンプルな例として、コロナ以前は、私たちはインドネシアであろうが、外国であろうがどこでも好きな観光地に自由に行くことができました。
しかしコロナ後にはその趣向が変わり、他人との接触を極力避け、安全に旅行ができることを選択するようになり、それがステイケーション(ステイとバケーションの合わせ言葉)と呼ばれるものです。
ただパンデミックにより、ホテルは大きな影響を受けたので、ホテル業に携わる人々は単にステイケーションだけを受け入れればいいということではなく、パンデミックを乗り切るためには、WFH(ワーケーション:ホテルで働く)の様なものも提案しなければいけませんし、政府が定めるCHSEをきちんと整えることにより、滞在客に安心して休暇を過ごしてもらうことができるようにしなくてはいけません。
多くの人と接触することなく旅行を楽しみたいという希望もまた、パッケージ旅行の趣向を変化させました。
観光産業に関わる人々は、旅行中に旅行客がより安心して、ウィルスに感染する可能性をできる限り抑えることができる、特別なパッケージ旅行や小グループを企画しなければいけません。
また観光地の話では、新型コロナによって多くの観光地が大きな影響を受け、訪れる観光客がいなくなってしまったために、中には閉鎖を余儀なくされた観光地もあります。
そのため観光業に携わる人々はコロナ禍の中、変化している旅行に対する趣向をとらえるために重要な役割を果たす、技術の進歩を上手に活用しなければいけなく、オンライン休暇のためのバーチャルツアーなどもその1つです。
同じように、インドネシアでの旅行に対する趣向の変化は、レストラン関係の事業にも影響を与えました。この場合もやはり、コロナ禍を乗り切るため、レストラン関係の事業に関わる人々は、変化する消費者のニーズや習慣に合わせつつ、進歩させていかなければなりません。
新型コロナのパンデミック禍で、70%の人々がフード・オンライン(配達、持ち帰り、ケータリングサービス)を利用しており、レストラン側もこのニーズに対応しなければいけなくなっています。またアウトドアで食事をとるという発想も、パンデミックが収束した後でも、継続して保健衛生を守り、他の人とのソーシャルディスタンスを保ち、ウィルスの感染を防ぐように、と社会の流れは動いていくとと予想され、そうするとこのアウトドアで食事をとるということも、その人気はこれからも続くのではないかと予想されます。
これらが、コロナ禍もしくはパンデミックが収束するまで、インドネシアでの旅行に対する趣向に対するいくつかの戦略です。
この戦略が、パンデミックによりめちゃくちゃにされた、インドネシアの観光と創造経済の分野を再興させるよう期待されています。
インドネシアのビジネスを知る 旅行業界編
日本の旅行業界で仕事をした経験がある人なら、よくわかると思いますが、これまで日本の旅行業界の先頭に立ち、日本人観光客を世界中の魅力溢れる観光地に送り出す事を実現していた、可能にしていた商品こそが、いわゆるパッケージツアーと呼ばれる商品です。
旅行に必要な情報(パスポート、ビザ、航空券、ホテル予約、オプショナルツアー、などなど)は全て旅行会社が適切にアドバイスをしてくれ、巡る観光地のタイムスケジュールも綿密に管理して、コントロールしてくるため、限られた日数しか仕事を休めない『忙しい日本人』でも効率よく、しかも安全に海外旅行が行えるというまさに、私たちの夢を実現してくる夢のような商品でした。
それが、新型コロナウィルスのパンデミックにより、あっさりと崩壊してしまいました。これまで旅行業界を引っ張ってきた年配の方から最近就職したばかりの若い方まで、この未曾有の出来事に対して、こんなにもあっさりと簡単に、旅行産業というものは崩壊してしまうのかと唖然とする人もいれば、嘆き悲しむ人、もしくはこの崩壊を転機に、新たなビジネスチャンスの可能性を見つけた人もいるかもしれません。
旅行という行為自体、癒されたり、ワクワクしたり、ときめいたり、興奮したりと(あげ始めたらきりがないですが)人々が自分の心をより豊かにまたはリカバーするための行為だと考えれば、その大前提として、一番重要な要素に安全性があげられると思います。
「旅行は平和産業である」と誰かが言われた通りで、もしその一番重要な要素が保障されなくなってしまえば、あっさりと崩壊してしまうのも、無理は無いかも知れません。ただし、先にご紹介させて頂いた通り、緊急事態(パンデミック)が発生すればその後必ず、再興そして平常化もあるということです。
今まさに起こっているパンデミックが観光産業や旅行業界も含めて、世界そして社会全体の産業構造を大きく変化させていることは揺るぎない事実ですが、だからこそ、今私たちも様々な情報を学習し、実体験を通して自らも変化していかなければならないのではないでしょうか。