インドネシアの政府機関には、労働局という機関があり、最新の就労者の労働時間についての規定を詳しく解説しています。1ヶ月のうち何日仕事があるのか、労働局の規定は、インドネシア政府の労働法に則っているか、などというのがその主な内容です。
人材関係の人々からよく、このフレキシブルな仕事の時代にもまだ、労働局が定める、就労者の労働時間の規定について、注意しなければいけないのですか、という質問を受けます。
その答えは「はい」です。
なぜかというと、大きく2つの理由があります。
- 1つ目は、労働時間の規則は、労働者の権利と義務にとても深いつながりがあるからです。
- 2つ目は、会社ごとによって、労働時間の規則が変わるためです。
それでは、インドネシアではどのように労働者の労働時間をコントロールしているのでしょうか。
「どうして会社ごとに労働時間が変わるのか」という質問をする人もいるかも知れません。
実際の労働時間は、9時から17時までだったり、8時から16時または17時まで、もしくは08時半から17時半までが労働時間だったりと色々なケースがあります。
この規則は、会社の規定だけに基づいて決められているのでしょうか。労働局に従った場合、インドネシアの労働時間はどのように決められているのでしょうか。
インドネシアの労働時間、休憩時間や残業に関しては、労働省によって法が定められていますが、時間の詳細については、会社の規定と労働者との契約により決められています。
それでは、まずは法律に照らし合わせた場合の、インドネシアの労働時間について、ご紹介させて頂きます。
政府(労働局)による労働時間の規定
インドネシアでは労働者の労働時間は、労働法に基づく規定と労働創造法によって定められています。
それでは、両者どのように労働時間を定めているのでしょうか。
両者とも、会社ごとに適用できて、かつ労働局に従う2種類の労働時間の規定を定めています。
- 週休1日制の場合で、1日7時間または1週間に40時間の労働時間。
- 週休2日制の場合で、1日8時間または1週間に40時間の労働時間。
この規定をベースに、会社やその分野・産業ごとの必要性に応じて調整されます。
また、この規定に当てはまらないとする分野・産業の会社ももちろんあり、この規定よりも労働時間が少なかったり、多かったりする場合もありますし、24時間または半永久的に労働活動が必要な分野・産業もあります。
また逆に、労働者の労働時間が規定よりも少ないという特徴をもった、下記の職種もあります。
- 1日に7時間未満、週35時間未満という仕事。
- 就労時間がフレキシブルまたはフレキシワーク。
- 職場以外の場所で仕事が行える、いわゆるテレワーク。
言葉を変えれば、これまで説明してきた労働局に従った労働者の労働時間の規定は、あくまでもベースであって、決して標準ではないということです。
言ってしまえば全ては、あなたの従業員と会社との契約に帰するということです。
そして、これについては法律も、労働者と会社の両者に対して、お互いが同意できる労働時間に調整できるよう柔軟に行うとしています。
労働者のシフト制労働時間
仮に労働法に基づく規定と労働創造法の中に、労働者のシフト制労働時間に関する規定がなかったとしましょう。
しかし一方で、政府が会社に対し、シフト制労働時間を調整するため、必須業務としされる職種と分野に関して労働・移民法の中で、それを許可しているきざしがみられます。
政府は、必須業務とされる職種と分野においては、会社が労働者を祝祭日の日も働かせる事を許可しています。
政府が定める、必須業務だとされる職種と分野は下記の通りです。
- 健康・保健
- 輸送・輸送整備
- 観光業
- 郵送・通信
- 電力・水道・ガス
- 小売・販売
- メディア・マスコミ
- 警察
- 環境保護
- その他の分野で、活動を停止した場合に、生産の滞りや、損害が発生する場合。
かといって、労働時間以上の時間を労働させる事は、労働省の定める法律で認められているのでしょうか。
その答えはもちろん「ノー」です。
会社は常に、労働省が定めた労働時間を基本のルールにして従い、それに合わせなければいけません。
この基本ルールに則った上で、会社は、シフト制の労働時間などを通して、各従業員の労働時間を調整する権限が与えられているのです。
言葉を変えれば、シフト制の労働時間によって、従業員が1週間に40時間以上働かないように調整されているのです。
残業時間の規定
政府は残業時間についても、労働省の定める法律の中で規定しています。
それによれば、従業員の残業時間は最長で1日3時間、1週間13時間までとされており、
残業時間に応じて従業員に残業代を支払う事を義務づけています。
労働創造法の残業時間規定の変更
残業時間の制限が変更され、残業時間は最長1日4時間、1週間18時間までにされました。
これに付け加えて、いくつか追加の規定が労増創造法の中に定められました。
会社内で人材育成を担当する人は、従業員名、残業内容、残業時間が書かれた残業者リストを作成しなければいけません。
これだけではなく、会社は従業員から、手書きとデータの両方で残業への同意を得なければいけません。もしこの同意書がなければ、従業員には残業を拒否する権利があります。
休憩時間と有給休暇
従業員の労働時間の調整は、労働時間だけを調整するのではなく、休憩時間も調整します。
労働省の労働時間についての規定では、会社は休憩時間と有給休暇を従業員に与えることを義務づけています。
まず休憩時間は、4時間連続の労働に対して30分間で、労働時間には含まれないと定められています。
例えば、9時から18時まで、計9時間会社にいる従業員がいる場合、
実労働時間は9時間ではなく、休憩時間の1時間を引いた8時間という計算になります。
休憩時間の他に、会社は毎年、有給休暇を従業員に与える事も義務づけられています。
1年間の中で、継続的に規定の労働日数を満たした就労者は、最小12日の有給休暇をもらう権利があります。
会社は長期有給休暇を与える権利もありますが、前述したとおり、従業員と会社との契約内容によりケースバイケースです。
労働時のお祈りの時間
政府は、会社の従業員が、その各々の信仰に基づいて、お祈りをする時間を設ける事を義務づけています。
もしあなたの従業員が会社に対して、お祈りをする時間がない、と言ってきた場合には、きちんとその時間を設けてあげましょう。
生理・妊娠中の女性
人材育成に携わる人には特に、生理・妊娠中や授乳期の女性の労働時間についての理解は、労働省の法律に定められているので重要で、生理により痛みがある女性は初日と2日目は労働しなくても良い、という規定があります。
ただしこの場合には、会社やその上司にきちんと事情を説明した上で了承をもらわないといけません。
また生理のほかに、産休の場合には3ヶ月間の有給休暇を与えることが義務づけられています。
3ヶ月間と言うのは、出産間際の1ヵ月半と出産直後の1ヵ月半を指します。
万が一、流産してしまった場合にも1ヵ月半の有給休暇がもらえます。
人材育成や経理担当の人は特に、これらの労働時間に関する労働省の規定は覚えておきましょう。
例えあなたの会社が、今実際にはフレキシブルワーキングのシステムを採用しているとしても、インドネシアで適用されている就労時間の規則を理解しておく事は重要です。
今の時代、オンラインで従業員の出勤を管理できるアプリを利用すれば、従業員の就労時間を簡単に把握する事ができますし、就労時間の規則を理解する事は、従業員の就労時間を常に一定に管理でき、給料の算出にも役立ちますので、できる限り覚えておきましょう
インドネシア企業と取引のある方へ 注意すべきビジネスアワー【まとめ】
国民の8-9割をイスラム教が占めるインドネシアでは、宗教に関連するイベントは、国の経済やビジネスに特に大きな影響を与えています。その代表的な例が、ラマダン(断食月)とレバラン(断食明けの大祭)と呼ばれる宗教行事で、イスラム教徒にとって年に一度の大切なイベントです。
このラマダンとレバランの日程は、イスラム暦によって毎年開始日程が変わるので、事前に確認が必要で、このレバラン休暇は例年、前後併せて1週間以上の大型連休となります。
この期間は当然、ビジネスオフィスや工場もお休みになるので、注意が必要です。
レバラン休暇時には、インドネシアの人々は、それぞれの実家のある田舎などに帰省をしますが、ここ2年間は、新型コロナ感染拡大の影響により、移動による感染拡大を防ぐために当初予定されていたレバラン休暇や政令指定休暇の日程が変更されました。
またラマダン中は、日中に飲食ができなくなることから、勤務時間が早まったり、短縮したりするケースもあります。
一般的にラマダン期間中には作業効率が低下すると言われており、打ち合わせのアポ取得や長時間の拘束が発生するようなプロジェクトは難航する傾向にあります。
また、レバラン休暇の前後で更に長く休暇を取るケースも珍しくありません。