インドネシアでビジネスを行うときには、インドネシア語を使う機会が必ずありますし、英語を使うよりもインドネシア語を使った方が、あなたの会社の人達やビジネスパートナーとも、より良い人間関係を築く事ができます。そこで今回は、インドネシア語の敬称や呼びかけについてご紹介させて頂きます。
まず英語でいうとMr.(ミスター)やMrs.(ミセス)に当たる言葉は、インドネシア語でもあります。日本語ですと、もちろん相手の年齢や性別によって言葉が変わることもありますが、一般的には「○○さん」という言葉を使えば、相手に失礼がありませんし、とってもシンプルです。そしてインドネシア語の場合にも、相手の年齢や性別、相手との関係によって敬称や呼びかけの言葉が変わります。
インドネシア語を勉強していくにつれ、またインドネシアでビジネスを行っていく上で、必須になることですので、しっかりと覚えましょう。
敬称
基本的な一般的な敬称・呼びかけ
日本語で言う「○○さん」や「○○様」など、相手の名前に付ける言葉を敬称と呼び、相手に呼びかけたり、声を掛けたりすることを呼びかけと呼びます。
日本語ですと、知らない人に呼びかける時には普通、「お兄さん」、「お姉さん」、「ご主人」、「奥さん」と言って声をかけたりしますが、インドネシア語で呼びかける場合にも、それぞれの相手に相応しい言葉を使って相手を呼びかけます。
まずは一般的なインドネシア社会で使える言葉をご紹介します。
Bapak(バパッ)
あなたが声をかける相手の年齢が、およそ中年以上の男性の時には、この言葉を使います。
中年以上とは、大体40歳以上を指しますが、およその見当で問題ありません。
そしてこの言葉は、もともとは「お父さん」や「おじさん」とう意味で、この言葉の省略形が、Pak(パッ)という言葉です。
例えば、名前が田中さんなら、Bapak Tanaka、またはPak Tanakaとなります。
会話の中では基本的に、BapakとPakのどちらを使っても特に問題はありませんが、どちらかというと省略せずにBapakを使った方がより丁寧に聞こえます。
さらにこの言葉は、知らない相手と会話をする時など、相手の名前を入れることなく、相手とコミニケーションをとる事ができます。
例えば、知らない相手(男性)にありがとうTerima kasih(トゥリマカシ)を伝える時には、
Terima kasih, Bapak、 または、 Terima kasih, Pak.(省略形)と言いましょう。
Ibu(イブ)
次に、あなたが呼びかける相手が、およそ中年以上の女性の場合にはこれを使います。
こちらも男性の場合と同じく、大体の年齢で問題ありません。
このIbuという言葉も、もともとは「お母さん」や「おばさん」いった意味があり、また
Ibuの省略形はBu(ブ)と言います。(余談になりますが、インドネシア語は本当にたくさんの省略形が存在し、インドネシアの日常生活にも様々な省略言葉が溢れています。ですので、最初は1つの言葉で2通りの表現があるため戸惑う事もあるかも知れませんが、逆に1度覚えてしまえば、インドネシア語の表現方法や理解の幅がグッと広がります)
ですので、相手の名前が田中さんの場合は、Ibu Tanaka、もしくはBu Tanakaと言います。
こちらもIbu(イブ)でもBu(ブ)でもどちらでもOKです。
また、おはようございます(Selamat pagi)を言う時には、
Selamat pagi, Ibu. または、Selamat pagi, Bu(省略形)と言います。
Mas(マス)
相手が20代位から30代位までの、若い男性の場合にはこれを使いましょう。
日本語で言うと「お兄さん」と言う様な意味で、あなたが呼びかける相手が同年代でも、年下でも、相手が若い男性であれば、「お兄さん」と呼ぶことで敬意を示せます。
例えば相手の名前が田中さんの場合は、
Mas Tanakaと言います。ちなみにこのMasという言葉には省略形はありません。
こんにちは(Selamat siang)を言うときは、
Selamat siang, Mas.と言います。
妻が夫を呼ぶときもMas
この言葉はインドネシア全土ではなく、ジャワ島の地域限定ですが、結婚後に妻が夫を呼ぶときにもMas(マス)を使い、日本語で言うと、夫のことを「あなた」と呼ぶ感覚に似ており、夫への敬意を表す言葉になっています。
Mbak(バッ)
あなたが呼びかける相手が、およそ10代から30代くらいまでの若い女性の場合には、これを使いましょう。
インドネシアの女性も若く見られる事をとても喜ぶので、年齢が多少高い女性に使ってみるのも効果があるかも知れません。
この言葉の発音は、日本語にない発音なので、少し言いにくいかもしれませんが、
唇を閉じた状態(m)からバッ(bak)と言う感じで、もともとは「お姉さん」を意味する言葉です。
相手の名前が田中さんの場合は、
Mbak Tanakaと言い、こちらも省略形はありません。
こんばんは(Selmat malam)を相手に伝えるなら、
Selamat malam, Mbakとなります。
「おばあちゃん」と発音が似ているので注意
この若い女性を呼ぶときのMbak(mバッ)という言葉ですが、ジャワ島の地方で使われる単語の「おばあちゃん」と発音がそっくりになっています。
おばあちゃんは、Mbah(ンバー)と発音するのですが、間違えると大変なことになりますので、若い女性を呼ぶ時にはくれぐれも注意しましょう。
親しい人を呼ぶ場合
ここまでは、敬称・呼びかけの基本形をご紹介してきましたが、インドネシアでビジネスを始めた最初のうちは、ここまでの内容をマスターしておけば大丈夫でしょう。
そしてインドネシアの人々の文化や習慣をよく理解し、よりインドネシアの人々との関係を深めていくようになったら、次にご紹介するより親しい関係での敬称や呼びかけをマスターできようにしましょう。
Om(オム)
呼びかける相手が、自分の親と同世代くらいの年上の男性を呼ぶときに使いますが、
既にお互いが知り合いであることが絶対条件ですので、親しい人以外に使うと、相手に変な顔をされてしまいますので、注意しましょう。
もともとは、「親戚のおじさん」に使うインドネシア語ですが、転じて身近な男性(親世代)を呼ぶときに使います。
Widodo(ウィドド)さんなら
Om Widodo
気をつけて(Hati-hati)をいうときは、
Hati-hati ya, Om.
ハティ ハティ ヤ、オム と言います。
Tante(タントゥ)
呼びかける相手が、自分の親と同世代の女性を指して使われます。
相手によっては「お姉さん(Mbak/mバッ)」と呼ばれたほうが喜ぶ人もいるので、相手をよく観察してから声をかけましょう。
こちらももともとは「親戚のおばあさん」に対して使われるインドネシア語ですが、親しい関係の人に使います。
ナニ(Nani)さんなら
Tante Nani
お元気ですか?(Apa kabar?)と聞くときは、
Apa kabar, tante?
アパ カバル、タントゥ? となります。
周りの人の真似をして呼んでみよう
インドネシア語の敬称には、呼びかける相手の年齢や、あなたとの関係性によって呼び方を変えた方が、相手に良い印象を伝えられる言葉があります。
全ての敬称を日本語で言う「○○さん」という言葉で使い回せれば、それにこした事はありませんが、そう上手くはいきません。
では1番適切な敬称を見つけるには、どうしたら良いのでしょうか。
その効果的な方法の1つとして、あなたの回りのインドネシア人同士の会話をよく注意して聞き、その人たちが何と呼び合っているのかを聞いてみると良いでしょう。もしくは、相手に対して率直に「あなたのことを何と呼んだらいいですか」と直接聞いてみるものありだと思います。
あなたの周りにいる、インドネシアの人々を観察してみると、年齢等関係なく、皆から意外にも「親戚のおじさん・おばさん」として呼ばれている人がいるかもしれませんし、逆に「お兄さん・お姉さん」と呼ばれている場合もあります。
はたまた、逆に常に「○○さん(Bapak・Ibu)」で呼ばれているかもしれません。
特に自分と同年代の人が、何と他の人を呼んでいるかよく注意して聞いてみて、あなたもそれをまねてみるのが良い方法の1つだと思います。
ただしあなたより若い人が、ある人を「おじさん・おばさん」と呼んでいる場合、あなたが真似をして同じように呼ぶと失礼になる事がありますので、真似るのはあくまでも同年代の人にしたほうがいいでしょう。
ここまでは、インドネシア語の敬称と呼びかけの基本形と近しい関係のバージョンをご紹介しました。しかし、インドネシアには、さらに別の敬称や呼びかけの方法があります。
地域や人種によっても違うため、自分が住んでいる人や普段接する人が、どのように呼び合っているかに気を配る事が大切です。
日本人も中華系に分類される
オフィスではほとんどないと思いますが、街などを歩いていると、日本人はその外見や肌の色から、インドネシアの中華系の人々に間違われ、その敬称・呼びかけで呼ばれることがあります。
その場合は「Koko(ココ)/お兄さん」や「Cici(チチ)/お姉さん」と呼ばれるでしょうが、
決して差別したり、悪気があって言っているわけではないので、あまり気にしないで下さい。
人種や性別関係なく、若い人を呼ぶ単語もここで追加でもう1つご紹介します。それは性別や人種に関係なく使われる表現です。
Kakak(カカッ)
この言葉は、インドネシア語を勉強したことのある方ならご存知だと思います。
「お兄さん」、「お姉さん」を表す単語です。(男女共通)
これは、お店などで店員が若い男性や女性を呼ぶときに使います。
中年以上の男性はBapak(バパッ)、女性はIbu(イブ)で、基本的には中年になっていない人に使います。
あなたが使うことは、あまりないかもしれませんが、呼ばれることはあるので、覚えておくといいでしょう。
ビジネスで役立つ 簡単なインドネシア語講座 敬称編【まとめ】
敬称を実際の会話で使いこなす事は、インドネシアでビジネス、または普段の生活をしている時に、相手と会った瞬間、相手の年齢や様子をとっさに判断して、適切な言葉を選んで使わなければいけないので、初めのうちは大変です。
ただこれが慣れて上手く使えるようになると、お互いの距離が一気に縮まり、親しい人間関係を築く事ができるのですが、そこは慎重に慎重に、使い方を誤って相手に不快な思いをさせたくないと心配して思い切って使えないのが人の心というものです。
よくある失敗例としては、本来お姉さんと呼ぶべき人をおばさんと呼んでしまったり、逆におじさんと呼ぶべき人をお兄さんと呼んでしまう事があります。
そこで前述した通り、周囲の同年代の人が相手をどのように呼んでいるかに注目して、同じように呼んでみるのがおすすめです。
相手の話を注意深く聞いたり、その人があなたと話す時に、あなたの事を何と呼ぶかをよく注意してみましょう。つまり、あなたの耳が一番大事なのです。少しずつでもいいので、ぜひ敬称・呼びかけをマスターできるようになりましょう。